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アクメ顔と掌編『かはつるみ』(3)

2017 年 3 月 22 日 Comments off

一日一アクメ顔スケ~~~~~ッチ!
本日のアクメ顔。
いや、もうアクメ顔とかわけがわからない(笑)。
でも、ホント、ビデオ男優さんの射精してる瞬間を参考にして描いてるから、アクメ顔であることは間違いない!
イク瞬間の顔。いろいろ見ていると、ホントにやっぱり微妙な顔の動きとか勉強になります。
くそ~~~~~、これからもっと勉強するぞ。
てか、もっと人間の表情全般を研究してみるといいかも。
日々精進ですなあ。

あとは角刈りが描きたかったので(笑)。
うむ、角刈りは難しい……。
これがセクシー!というのは頭の中にあるのに、いざ描こうとすると何かが足りない感じになっちゃう。
自分の心の中にある、『角刈りセクシー!』、な気持ちを伝えきれていない感じで、くうううううっ、何故だ!?何故俺のこの愛を伝えきれないのだ!?となるのでした。
スポーツ刈りのほうがキャラクターのセクシー感を伝えやすい……気が。
顔の形と髪型の微妙な関係なんですかね?

くふーーーーーーっ!
でも何だか『さぶ』っぽい雰囲気でアガる♪

 

さて!

江戸時代の価値基準にのっとって、『男色』『衆道』『陰間茶屋』『性別』『セクシャリティー』を考えてみたら、一体どうなるんだろう、と市川が疑問に思って書いてみた、掌編『かはつるみ』の第三回目。
とりあえず田積千代丸と田積主計編は終わりー。
面白くなったのでときどき書いてみようと思いますです。
エロは絶対ないけどねっ(笑)。

第一回と第二回はこちら~。
第一回
第二回

 

 

掌編「かはつるみ」(3)
-田積千代丸と田積主計の場合

****

 

主計は夜、文机に向かいながら考えていた。

 

 

念者念友、衆道のことなぞ、千代丸は全く分かってもいない。
本当にあいつはいつまでたっても子供だ。
父上と母上は来年、千代丸を元服させようと思っているらしいが、果たして本当にどうなることやら。
藩学に通って学問に精を出しているはずなのに、いまだに乳母のすずの話、戦国の世の冒険譚にうつつをぬかしているのも、子供じみていていけない。

 

 

酒席で叔父上が言っていた。

昔は衆道の関係がこじれて刃傷沙汰になることもあったのだと。

故に藩内では、衆道は好ましくない、というお触れが出たこともあるらしい。

戦国の世のように、命を賭して戦う戦場ならば、何をしてでも自分の背を守る人間、義兄弟がいてくれれば助かる。
命の問題なのだから。

けれども現代のような平和な世の中であれば、その必要はない。

ましては忠義は上様にこそ向けられるものであって、朋輩などに向けられるべきものではないのだ。そんなことをしていたら物事の順序、というものが狂ってしまう。「お伽噺」の上のことであればまだしも、現実の世界で衆道は今の世の中には少々「やっかいなこと」を引き起こしかねない。

それ故、平和な時代、忠義の心に無益な混乱を生じさせないために、衆道は好ましくないというお触れが出たのだろう。

無論、だからといって、若輩者を年長者が良き道にすすめるように手を引いてやる、そうしたこと自体に否やを唱える者は誰もいない。

 

 

確かに友の中には、真剣に念者念友の関係を結んでいるものもいる。

こちらは主従関係のような心の堅さを感じる。

お互い、人生の高きを目指し、相助けあっているような、男子の清いものを感じる。

あるいは城下でも知られた美形の前髪に「岡惚れ」しているものたちもいる。

彼らは前髪の清々しさにふわふわと心ときめいているように思われる。

甘やかな時間をそこに求めているのを感じる。

自宅の下女や商家の娘に入れ込んでいるものもいる。

こちらは少々軟弱な者達とみなされていて、その者らの家族は娘達に惑わされて腑抜けにされるぐらいなら、前髪の若者と契って凜としてくれるほうがマシだと愚痴をこぼしている。

心奪われて、うつつを抜かすのは、男子の本懐ではないのだ。

さまざまなものがいる。

ただ、主計には念者だの念友だのという関係は堅苦しくて、古くさいようにも感じられた。そして前髪の美形よりも、下女や商家の娘の方が魅力的に感じられたのだ。

もっとも、友の中にはまだ前髪を落とさないものもいて、そんな彼らが武芸にはげむ様子を見たとき、主計の下半身が妖しく疼くときもある。

そんな清々しい前髪に言い寄られたら悪い気はしない。

相手から想いを寄せられて、もし自分の気持ちも傾けば、念者念友の間柄になることはあるだろう。

娘達と前髪は別の話だ。

 

 

敬一郎と自分は親しい友だ。
けれども何故念者念友にならないのだろう。

俺は敬一郎のことをとても大事だと思っている。

けれどもそれは恋とは違うものだった。

どちらからもそんな話が出たこともなかった。

それだけの話だった。

 

 

父上は今宵も佐賀様のお宅にお泊まりのようだ。

漢詩の話が興じてしまったか、仕事の話が長引いてしまったか。

どうせいつものことだ。

 

 

父上と佐賀様は今でも『かはつるみ』を共にされるのでしょうか。

 

 

千代丸の幼い問いには笑ってしまった。

 

 

馬鹿馬鹿しい。

 

 

人間、そんなことをする気持ちになるのは前髪がある間だけだ。

前髪を落とした大の男が、ふたりでそのようなことをするワケがない。

そんな不自然なことがあるものか。

それにだ。

俺も敬一郎も、もう前髪のある子供ではなく、立派な大人の男だ。

ひとりの独立した、立派な人間だ。

 

 

その「前髪のない」敬一郎が今、突然主計に恋をうちあけたとする。

そんなとき、自分はどのように感じるだろうか。

何だか馬鹿にされたような、男として一人前だと見なされなかったような、とても侮辱されたような心持ちになるだろう。

 

 

けれども例えば敬一郎にまだ前髪が残っていたら。

あるいはまだお互いに前髪が残っていたら。

敬一郎の恋が真摯であれば、応えてやることもあるかもしれない。

敬一郎は朴念仁なところがあるが、かえってそれが素朴で清いものを感じさせる。

顔は間違っても女子のように美しいことはないが、男子らしい凜々しさを持っている。

応えてやることに否やは全くない。

そういうものだ。

 

 

本当に千代丸はいつまでも子供だな。

まるで人の道の道理が分かっていない。

 

 

主計はふふんと嗤った。

(了)

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アクメ顔と掌編『かはつるみ』(2)

2017 年 3 月 21 日 Comments off

一日一アクメ顔スケッチ!

今日はちょっとコミカル……?ですかね(;´Д`)

 

んでは、江戸時代の価値基準にのっとって「男色」「衆道」「陰間茶屋」「性別」「セクシュアリティ」を考えたら、どんな感じになるのかなーと思って書いてみた掌編『かはつるみ』の第二回。

エロ無しだよ!エロゼロ!

第一回と何でそんなもの書こうと思ったのよについてはコチラ
掌編『かはつるみ』(1)

 

 

****

掌編『かはつるみ』(2)

****

「知っているか?義兄弟はともに『かはつるみ』をすることもあるのだぞ、千代丸。特に念者念友の間柄にもなればな」

ある日、千代丸の兄、主計(かぞえ)がニヤニヤした笑いを浮かべて千代丸に言った。
主計は元々鶴福丸という名だったが、去年元服して前髪を落とし、名を改めて大人になった。
普通、大人になると年少の者と軽口を叩くことはなくなる。
けれども主計は生来お調子者なところがあり、いまだに千代丸をからかっては喜ぶ。

「かはつるみとは何でございます、兄上」

千代丸がそう聞くと、余計に主計はくつくつと含み笑いをした。

「まあ、お前だってそのうちにわかるようになる」

 

『かはつるみ』とはいかなるものだろうか?

 

ふと千代丸は考えた。
考えて主計に尋ねてみた。

「ならば、兄上は、敬一郎様と『かはつるみ』をされたことがあるのですか?」

主計は千代丸を見下すようにニヤニヤと笑った。

「俺と敬一郎はそんなことをしたことはないなア。俺達は兄弟分のような仲であっても、念者念友ではないからな。それにそもそもアイツは何事にも初心なところがある。『かはつるみ』なんて聞いたら卒倒しかねん」

佐賀敬一郎は佐賀家の長男であった。
千代丸と佐吉丸のように、主計と敬一郎は幼い頃から共に遊ぶ仲だった。
今はふたりとも元服してしまっていたが、相変わらず敬一郎の隣には主計が、主計の隣には敬一郎がいるのが日常だった。

「兄上、父上と佐賀様は幼い頃、とても仲が良かったとうかがっております」

「そうだな、父上は佐賀様の『懐刀』とも言われているしな。剣の道、学問の道、お若い頃からおふたりはともに研鑽を積んでいらした方達だ」

「父上と佐賀様は『かはつるみ』をされたのでございましょうか?」

「は?何を言っている?」

「おふたりは昔から兄、弟と呼ばれるほどの間柄であると伺っております。ならば兄上のおっしゃるように、ともに『かはつるみ』をしたこともあるのではないでしょうか」

「馬鹿」

主計は千代丸の言葉を聞いて、吹き出しながら言った。

「まあ確かに仲の宜しいおふたりだ、若い頃にはともに『かはつるみ』ぐらいされたかもしれないな」

「ならば今はどうなのでしょう。義兄弟の間柄のおふたり。今でもともに『かはつるみ』されるのでしょうか」

「しないしない、絶対にしない」

主計は最早笑いをこらえることは出来なかった。

「そんなものはどちらかにまだ前髪がある子供の頃までだ。ましてや前髪がとれた一人前の男がふたりで一緒に『かはつるみ』をしてたまるものか。前髪がない、元服をした、ということは、つまり立派な一人前の男になったということだぞ。そんな男がふたりして『かはつるみ』なぞするものか。考えても不自然だし、ぞっとする。ときおり前髪のない、元服した男同士でもそうしたことをしたがる『野郎好き』と呼ばれる物好きがいるそうだが、変な話だ」

千代丸は再び考えた。

 

相変わらず『かはつるみ』が一体何かは分からない。
けれども義兄弟のちぎりを交わした者同士が、少なくともどちらかに前髪があるときにだけやること。
一体そんなことがあるのだろうか。

 

そして言った。

「そうは言っても、佐賀様と父上は若い頃、ともに『かはつるみ』をしたことを懐かしく思われることぐらおありでしょうね。ならば今でも『かはつるみ』を共にしたいとお考えになられることもあるのやもしれませぬ」

千代丸が至極真面目にそう述べると、主計は腹を抱えて笑い転げた。

「はははははは、今でもだと?前髪も落とされて、立派な男となられたおふたりが、そのようなことを思うものか。千代丸、お前は本当にまだまだ子供だな。何も分かっていない。前髪がないおふたりがそんなことをしたら、それこそ奇っ怪だ。珍妙だ。奇妙奇天烈だ。それともお前は父上や佐賀様が『野郎好き』なる者だとでも言うつもりか?はははははは、世の中にそんな道理はない。そんなことがあるものか」

千代丸は何故主計がそんなに笑い転げるのか、一向に分からなかった。

 

今宵も父上は佐賀様のお屋敷にお出かけになられた。
仕事の話をしたあとで、夕食をともにされるのだろう。
そのあとは酒など飲み交わしながら楽しく話をされるのだろう。
そして今宵もまた父上は帰宅が遅くなるか、あるいは佐賀様のお宅に泊めて頂くことになるのだろう。

千代丸は素直に考えていた。

そんなにも仲の良いおふたりなのだから、遠い日に、ふたりでともに行った『かはつるみ』が懐かしくなることもあろうと。

『野郎好き』なる者たちは、前髪のない、一人前の男同士で『かはつるみ』をするものらしい。
主計の言葉を考えると、それは珍妙なことらしかった。

確かに父上と佐賀様が『野郎好き』なるものとは思えない。
根拠は何もないのだが、おふたりが『珍妙なるもの』などということはありえないからだ。
それでも仲の良い義兄弟ならば、遠い日に共にした『かはつるみ』を懐かしく思う気持ちぐらいはあるかもしれない。

千代丸はそう思った。

『かはつるみ』がいかなるものかは分からない。

千代丸と佐吉丸も、近い将来、ともに『かはつるみ』をするのだろうか。

 

父上は。
父上はやはり今宵は佐賀様のお宅に泊まるのだろう。

 

<つづく>

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掌編『かはつるみ』(1)

2017 年 3 月 19 日 Comments off

一日一アクメ顔スケッチ!
ま、アクメ顔に見えない気がしないでもないですが……(笑)。
一応ビデオ男優さんが射精するシーンを参照したんですけどねえ。
ま、表情の勉強勉強♪

 

 

んで、本題。

先日のLet’s 江戸江戸でも書いたのですが、江戸時代、男同士がどうやってセックスしていたのか、ということに興味があります。
「男同士が」と言っても、よくある「衆道が……」「男色が……」「陰間茶屋が……」的な話ではなく、長屋の八っつぁんと熊さんが、男にムラムラしたら一体どうやってサクっとイッパツ抜いたのだろうか、そこに興味があるわけです。
「衆道」「男色」「陰間茶屋」は、きらきら素敵過ぎるし、金はかかるわで、正直、個人的にはどうにも別世界の話。
ヤリたくなったら、できるだけ金をかけないでヌキたい。そんなものではないかと。

と、言うことで、江戸時代、人々は男同士でセックスすることについてどう思っていたのか、実験的に書いてみました。
まあ、市川が江戸時代はこうだったのかもしれない、ああだったのかもしれないと言っても所詮推測、憶測の域を出ないのでフィクションです。

あまり具体的な時代を決めず、大雑把に江戸中期から後期にかけての頃ぐらいをイメージして、まずは武士階級、それも地方の藩のちょっとお上品な階級の暮らしの中だったら、と考えてみました。
そんな階級では、「男色」「衆道」「男同士のセックス」「セクシュアリティ」といった事象がどのように読み解かれていたのだろうか、と。
最近の自分はさらに、江戸という時代と生活苦(流行病、飢餓、貧困など)がどのような生活感覚、人生観を人々にもたらしていたのだろうか、ということにも興味があるのですが、とりあえずそこは置いておいおきました。

とりあえず、エロのない文章です(笑)。
エロゼロだよ、エロゼロ!(笑)
エンターテイメントでもないし(笑)。

ごめんなさいね!

一応三分割ぐらいしているので、まずは第一回目。

 

『かはつるみ』(1)

田積千代丸と田積主計の場合

****

田積千代丸

****

父上が出掛けられた。

今晩は上役でもある佐賀様のところの酒の席に呼ばれたと言う。
乳母のすずがそう言っていた。
今晩は、と思ったが正しくはない。
父上はおよそ五、六日おきに佐賀様のお屋敷に呼ばれているからだ。
また今晩も、と言ったほうが良いかもしれない。
仕事の話だの、何かの宴席だの、もらい物をしただの、ただ酒を飲み交わしたい、などなどの理由で佐賀様は父上を呼ばれることが多い。

今宵は何の用事であろうか。

おふたりとも漢詩に優れた方達でもあるので、共にお好きな漢詩のお話をされるのかもしれない。
江戸詰をされたときの思い出話をされるのかもしれない。
父上と佐賀様は幼い頃から、互いを兄とも弟とも呼ぶ、とても仲の良い友人同士でいらっしゃったと言う。
竹馬の友、というものは、父上と佐賀様のような間柄を指すのだろう、と千代丸は思った。
城の仕事で大事な役を勤めている佐賀様の覚えめでたいということは、この先、田積家も安泰ということであり、有り難いことだ、とは田積家の親類の誰かが言っていた。

自分は?
千代丸は考える。
佐賀様のところの次男・佐吉丸は、幼少の頃からの遊び友達だった。
まだもっと幼い頃、佐吉丸は佐賀様に連れられて我が家へやってきた。

「これから佐吉丸と仲良くしてやってくれ」

莞爾と笑いながら佐賀様はそうおっしゃった。

以来、遊ぶ相手と言えば、千代丸にとっては佐吉丸であり、佐吉丸にとっても千代丸であった。
考えてみれば佐賀家と田積家の間でふたりは最初から「竹馬の友」になることを「決められていた」ようなものだった。
それでも別に千代丸に何も不満はなかった。
おそらく佐吉丸にしてもそうだろう。
二つ年が離れていると言っても、佐吉丸は千代丸と「馬が合う」のだ。
佐吉丸がやりたい遊びに千代丸も興味があったし。その逆もしかりだった。

ふたりが最初に出会ってから数年が経ち、藩学に通うようになってからは「友達」の輪も拡がった。
今では友と呼べる者たちは、お互いに何人もいた。
それでも千代丸と佐吉丸のふたりは、藩学への行き帰りは必ず同道していた。

藩学へ通うことになったときも佐賀様は家に来られて、

「藩学でも何かと佐吉丸を見守ってやってくれ」

と言った。
父上も佐賀様のそばで笑いながらうなずいていた。
さらには、

「年長者として佐吉丸様の面倒を見てあげるのですよ」

と、千代丸の母親も微笑みながら言った。

友として佐吉丸と一緒に過ごす時間は楽しかったし、年長者として責任を感じることも背筋がピンとのびるようで誇らしかった。

藩学での学業の他に、千代丸と佐吉丸のふたりは戦国の世の、兄弟の武士が活躍するような噺を聞くのが好きだった。
仇討ち。鬼退治。さまざまな冒険譚。
千代丸の乳母がそんな噺をしてくれるのを、佐吉丸と千代丸は目を輝かせて聞き入った。
そして物語を聞く以外にも、ふたりは物語に登場するような兄弟の武士となって、仇討ちや鬼退治の世界に遊ぶことを常としていた。

物語に登場する「兄弟の武士たち」は兄、弟と呼ばれているが、本当の兄弟とは限らない、ということを千代丸と佐吉丸は聞いていた。
兄と弟、尊いちぎりを交わした義兄弟も、単純に兄、弟と呼ぶのだと。
そして義兄弟の中には念者念友というさらに深い関係を結ぶ者もあるのだと。

ふたりして兄弟の武士の活躍を演じて遊ぶうちに、千代丸と佐吉丸は義兄弟となろうと約束を交わしていた。
そして千代丸は年上なので念者に、佐吉丸は年下なので念友になろうとも誓った。
そしていつの日にか、遠くまだ見ぬ世界へ、共に大きな冒険の旅に出掛けるのだと誓い合っていた。

<つづく>

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